保全手続
例えば金銭の支払いを求める裁判中に相手方が自己の資産を処分して無資力になってしまったり、あるいは、不動産の明渡しを求める裁判中に相手方が当該不動産の占有を第三者に移転してしまった場合、せっかくの勝訴判決が画餅となることになりかねません。
このような事態を防止するためには、裁判前に保全手続(仮差押え・仮処分)を申し立て、勝訴した場合に容易に強制執行しうる状態にしておくことが非常に重要です。
仮差押えや一部の仮処分は、原則として相手方に知られることなく、かつ、訴訟よりも低い程度の証明(疎明)により速やかに発令されます(密行性・迅速性。なお、事案によっては裁判所の判断により債務者の審尋が行われる場合があります。)。
そのため、事案によっては、保全手続が相手方に与える影響は相当程度大きく、預貯金や不動産等の資産に仮差押えを受けた相手方から解決案が示され、その後の訴訟提起が不要になる事例もあります。
もっとも、保全の命令の発令にあたっては、裁判所が決定する保証金額を納付する必要があります(勝訴判決等後に還付を受けることができます。)ので、申し立てる側に一定の資力が必要です。